※ 本記事はCQ ham radio 2006年7月号に掲載された記事に一部加筆したものです。
アマチュア無線を始めた1979年の中学生だったころからインターフェアには泣かされました。初期の頃は50MHzだけの運用でしたが近隣には既にインターフェアが発生していました。幸い住宅密集地ではありますが近隣に恵まれたのか、ゴールデンタイムに「TVの映画が終わるまで無線止めてもらえませんか」、「昨日も良く無線が入ってたけど、どこか遠くの人と話をしてたの?」などの電話がしばしばありました。しかしながら私がアクティブになればなるほど被害を受けるほうの感情も高まり怒鳴られることを幾度か経験しました。
2003年にアマチュア無線を再開して郊外に越してきてから、インターフェアは何とか対策して、近隣とうまくやっていこうと思い、インターフェアについては真っ向から取り組むように心がけました。
ところでインターフェアあるいは電波障害といわれて「アマチュア無線をやっている人」は、自宅や近所の家に何らかの障害が起こることをまず想像しますが、アマチュア無線をやっている人が受けるインターフェアも多々あることも考えておくべきことです。いずれ「受ける」場合についても考えてみようと思っています。
インターフェアは色々な本、雑誌で書かれているように、実被害状況より相手の感情によるところが大きいようです。私は無線を再開するにあたってタワーを建てたのですが、事前に自宅敷地に隣り合う家々にはタワーの説明と共に「テレビの画面に波がでたり、テレビ、ステレオ、電話にモガモガという音声らしきものが入ったら、遠慮なく言ってください」と事前に説明をしておきました。
無線を始めたあとは明らかに自分の出した電波で障害が発生していると認められる場合は、まずは平謝り、謙虚な態度、そして効く効かないは別にして即時対策という心構えで対応しました。
対策パーツには意外なほど費用がかかりますが、新型トランシーバーを買うより少しでも対策用パーツを揃えるようにしました。
電波を出す側であるシャックの対策は万全を期して行いました。私は1kWの免許を受ける際に写真1、写真2のとおりコモンモードによる自宅のインターフェアを防ぐためにシャックの機器(パソコンも含む)間とACコードの全てのケーブルに数多くのコア、同軸ごとにコモンモードフィルタを挿入し、機器間のコモンモード高周波電流ループ切るようにしています。また同じ理由でローテータコントローラのケーブル、タワーコントローラのケーブルにもコアを多数挿入しています。
また、コアの挿入やフィルタ類の取り付けも大切ですが、シャックの整理整頓、特にケーブル類を丁寧に配置することも不用意な結合を防ぐため大切なことですので、ラックを自作したり新調して、余分な長さのケーブルを適切な長さにして、見た目をスマートにすることも対策の一つとなります。

【写真1】シャック背面のコアの様子

【写真2】同軸用コモンモードフィルタ
シャックの機器間に入れるコモンモードチョークを入れた様子は図1のように表せます。トランシーバー側のアースは積極的に取っていなくてもAC100Vラインの片側が接地されているためアースラインは形成されてしまいます。またアンテナ側はローテータケーブルなどがBのラインとして作用し、AC100Vラインの接地線側とつながります。コモンモードチョークを入れる目的は高周波電流の往復をAのライン(同軸)に集中させるためです。
コモンモードチョークを入れなければAとBのライン両方を流れて電流(高周波)は戻ってくる可能性があります。電流バランスを失った同軸であるAライン、ACラインや保安アースに相当するBラインからは高周波電流によって電波として輻射されインターフェアを引き起こします。

【図1】コモンモードチョークの役割
インターフェアが発生する前から近隣宅で対策するのはかえって不信感を煽りますので、インターフェアが出てから対策すべきだと私は考えています。私の場合はインターフェア発生を電話や直接言いにきてくれた近隣があれば、即写真3のインターフェア対策ボックスを持って対策させてもらっています。もちろん夜分であったり「散らかっているから後日にしてほしい」という事であれば後日伺います。対策に伺うときは爽やかな格好で、右手には対策ボックス、左手には「菓子折り」をもって伺います。

【写真3】インターフェア対策ボックス
対策ボックスの中には写真4のとおり少々重いのですが下記のものを常備しています。

【写真4】 インターフェア対策ボックスの中身

【写真5】分割型リングコア(右はFT-240-43)

【写真6】FT-240-43コアに事前にケーブルを巻いたもの(TV用同軸の一方にはJ-Jコネクタをつけて延長できるようにしている)

【写真7】市販のTVI用、TEL-I用フィルタ
質問されたら何に使うか、どういう効果があるかを答えられる方が、近隣宅も安心して対策している状況を見てくれると思います。できるだけ自分が理解している、あるいは過去の対策で効果のあったものを持っていきます。またスマートに短時間で対策を完了できるように市販品や事前にトロイダルコアに同軸やACケーブルを巻いたものを準備しておきます。
インターフェアが発生して対策をさせてもらう際には「これで完璧です」などとは絶対に言わず、「やれるだけの対策をしました。これでまた障害が発生するようでしたら遠慮なく言ってください」と言うのがベターでしょう。
私の近隣のTVI、TEL-Iなどはほとんどがコモンモードによる障害で、TV用同軸やスピーカーケーブル、電話線に直接乗ったものばかりでしたので、とりあえずリングコアやパッチンコアを多用してコモンモード対策を徹底的に行いました。特にACラインはローバンドでの効きが最も有効でしたので機種を問わず行っています。
トロイダルコアやパッチンコアを使うにあたっては、1ターンや2ターンではほとんど必要なインダクタンスは取れませんので完全な密巻きにならない程度に出来るだけ巻きます。またコアの材質もマイクロメタルズ社(アミドン)であれば43材かそれよりμ(透磁率)が大きいものの使用をお勧めします。
表1に近隣宅や自宅で発生したインターフェアの症状と効果のあった対策の一部をまとめてみました。
| 症状 | 対策 |
| 7MHz、10MHz、14MHz送信時インターホンの呼び鈴が鳴る | インターホンの親機にきている子機からのケーブルにコアを挿入(写真8) |
| 14MHz、18MHz、21MHz送信時にDVD、ビデオ再生時にステレオアンプを使用するとステレオスピーカにボリューム位置に関係なく音声混入、画像はブラックアウト | ステレオアンプとビデオ、DVDをつなぐケーブル全てにコアを挿入(FT140-43に各10ターン程度) スピーカコードをリングコアに巻きつける(FT140-43に10ターン程度) ステレオアンプのACケーブルを大型分割リングコアに巻きつける(5ターン程度)(写真9) |
| 14MHz、18MHz、21MHz、24MHz、28MHz送信時にTV画面が縮む | VHF用同軸をリングコアに巻きつける(FT240-43に10T程度) |
| 14MHz、28MHz送信で自宅TV全ての4ch~12ch(VHFハイバンド)にヨコスジの入った画面になる | TVアンテナ直下のTVブースター内部のFMカットスイッチをON |
| 14MHz送信時にタンクレストイレの洗浄水(ウォッシュレットではない)が勝手に流れる。(本来便座から人が立ち上がると勝手に流れるという機能です) | タンクレストイレのACケーブルにパッチンコアを数個、数ターン挿入 |
| 14MHz送信時に電話に音声混入 | 電話線と電話機の電源コードをトロイダルコアに数ターン巻きつける(写真10) |
【表1】発生したインターフェアの症状と対策

【写真8】インターホンの対策例

【写真9】ステレオアンプACラインの対策例

【写真10】電話機の対策例
前項の表1にある14MHz、28MHzで1kW送信時に自宅全てのTVの4ch~12ch(VHFハイバンド)に横スジの入った画面になるという障害がありました。他のバンドでは症状は発生しません。またアンテナの方位によっても顕著な変化がでました。
そこでスペクトラムアナライザで壁にあるTVアンテナ用コンセント(コネクタ)から出てくるスペクトラムを測定しました。図3は通常時のスペクトラム。図4が送信時(14MHz1kW)です。図4のスペクトラムの様子からTV用ブースターに入力された14MHzのためにブースター内部のアンプで相互変調を起こしているのがわかります。図5にブースターをスルー(ブースターを介さないとき)の14MHz1kWのときのスペクトラムを示します。

【図3】通常のTVアンテナコンセントの出力スペクトラム

【図4】14MHz1kW出力時のTVアンテナコンセントの出力スペクトラム(この時はTV画面に障害あり)

【図5】14MHz1kW出力時のブースターなし(スルー)時のスペクトラム
幸いTVブースター内部にFM放送除去用のHPF(ハイパスフィルタ)のスイッチ(写真6)があり、これをONしただけで上記の障害はウソのように改善しました。
【写真11】自宅屋外TVブースター内部(丸印がFM放送カット用HPFスイッチ)その下にはVHF用ATTスイッチもある。青いツマミはゲイン設定VR
この障害はクランクアップタワーの高さを下げると症状がより激しくなりました。以上よりブースター入力のHPFは効果がある場合がある、TVアンテナとアマチュア無線用のアンテナは出来るだけ離したほうが良い、との教訓を得ました。
100m以上はなれた住宅で50MHz200W送信時に特定のTVだけがVHF全チャンネルで画面に映っているものが分からなくなるほどの障害が発生しました。HF帯では障害は発生していません。
この障害は少し50MHzのアンテナ方位を変えると出なくなり、他のTVでは全く症状が出ないということでした。その住宅に伺って障害の発生するTVのVHFアンテナ入力にHPFを取り付けたところ障害が完全になくなり1kW出力時でも起こりませんでした。これも上記(1)の事例同様TVアンテナで受信した50MHzがTVに入力され入力部アンプが飽和して動作したのが原因ではないかと推定しています。
アマチュア無線を再開してから3年ほどの間に10軒で延べ20回以上の対策をしてきましたが、その後のクレームは今のところありません。対策一巡後は心置きなくフルパワーでパイルに参加しています。
インターフェア対策の難しさは、自宅以外で発生した障害については定量的データが取りにくい点が要因の1つだと考えます。ですので自宅で発生した障害を徹底的に対策し、経験を積み定量的なデータ得ることで近隣での迅速な対応が出来るようになると思います。
またインターフェアは近隣宅で発生するのですから対策後も当然顔を会わすこともあると思います。会ったときには「あのあと障害はどうでしょうか」とこちらから聞く勇気も大切だと思っています。
今も私の家の周りに次々と新しい家が建っており、想定外のインターフェアに出くわすかもしれません。そのときの対策はあらためて紹介したいと思います。
最近のトランシーバーはファイナルがFETなどを使ったソリッドステート型で、広帯域アンプとして動作させています。そのせいでトランシーバーに内蔵される出力のバンドパスフィルタやローパスフィルタは非常に特性の良いものになっています。それでもアンテナをつないで高調波の具合をみると、それなりに出ています。レベルは基本波に対して50dBほどとれているようなので、通常は問題ないと思います。
しかしながら1kW(+60dBm)の出力を出すとすると、50dBでも+10dBmの高調波成分が出ていることになります。そこで外付けのLPFを購入して取り付けてみました。
ネットワークアナライザを使う機会がありましたので、測ってみました。購入したLPFは評判の良いRFインクワイアリのLP3Kです。下の図1が通過特性です。
【図1】RFインクワイアリ製HF用LPF「LP3K」の通過特性
やや見難いですが、21MHzの5倍…105MHzで-76dBの減衰になっています。一方アマチュアバンドでの減衰は28MHzでも-0.1dB以下と、確かに優秀です。このフィルタをリニアアンプVL-1000の出力コネクタにじかに取り付けて高調波の観測されるレベルを見てみました。図2がローパスフィルタなしで21MHz1kW出力時(アンテナはクリエイトデザイン社214A接続)の同軸途中でバード4431で取り出したスペクトラムです。21.2MHzより106MHzのほうが結合度が約10dB高いので、このデータの106MHzの値より本当はさらに10dB低いです。図3はローパスフィルタを挿入したときです。

【図2】LPFなしで21MHz1kW送信時のスペクトラム

【図3】LPF挿入時の21MHz1kW送信時のスペクトラム
図2と図3を比較するとわかるように第5調波の106MHzが30dB以上減衰してます。ということでローパスフィルタとしての効果はあることがわかりました。ただ、これがTVIの改善にそのまま役立つということではなく、あくまでも高調波が減ったということにとどめておきます。