6mの八木アンテナに仰角ローターがつけられたら、EMEによるQSOが可能になる時間も増えるし、もしかしたら通常の電離層伝播でもなにか得られるものもあるかも…という期待をもって、アンテナ工事を検討しました。今まで8ELEを使っていましたのでアンテナのゲインや打上角、その他特性の向上の期待はさほど無かったのですが色々やるならアンテナエレメントも増やして10本に…という気軽な気持ちからの検討です。
ということで2005年9月5日に工事を実施して、6mの10ELE八木が上にも向くようになりましたので、まとめてみました。
今回の工事は今まで経験の無い6mバンドの八木アンテナに仰角ローターをつけるということがメインですが、今後のことも考えた工事としてもらいました。
以上の4点を行いました。工事はタワーを建てたときにお世話になったFTI社に検討と依頼をしました。
工事の準備といっても予算と見積りの見比べくらいです。前記の工事に一体いくらかかるのか想像付かなかったのでFTI殿と何度か相談し、仰角ローターは中古を使用し、同軸ケーブルは既存のものをそのまま使うということにしました。直下型プリアンプはNF重視として川越無線とウエストパークの特注品を比較し、耐電力からウエストパークのものをFTI殿を通して購入することとしました。総額300k円程度にもなってしまいました。
現在使っているタワーはFTI社のFDX-472Jという最長時22mというもので、タワートップからローテータまで1.5m程度です。ということは6m長のマストでは4.5mがタワートップからマストトップのまでの長さです。将来6mの八木アンテナを1波長(6m)間隔で取付けるにはあと1.5mマストが長い必要があります。また仮にそれだけ伸ばしたとするとマストの強度も心配でしたので60ファイのマストの内側にもう1本細いマストを挿入して2重構造とし、延長分はマストに穴加工して継ぎ足す形としてもらいました。マストの全長はこれで8.5mになっていますのでタワートップからは6.5m出ている計算になります。
上の写真がわかりにくいですが2重構造の60ファイマストです。内側にもマストが見えます。
上は延長部分の写真です。ボルトを通す穴と、割りが入っています。
使っていた8ELEもまだ2年半程度の使用ですので、まだまだ使えるのですが、エレメントを2本増やして10ELEとしました。10ELEクラスではナガラの12ELE、M2など海外のものもあり、色々検討しましたが結局クリエイトデザインのCL610Aとすることにしました。ブームステーこそ必要ですが13.1mというブーム長も魅力的でした。その他のスペックは回転半径6.9m、受風面積0.9m2、重量17.5kgです。ゲインは16.2dBiとあります。
これは当初ERC51を想定していましたが、FTI殿とのやりとりで誤解があり、偏波面のためと理解されていて小型仰角ローターERC51を選定していました。ところがアンテナと仰角を変える話が具体化すると、とてもERC51ではもたないとの事(強風でアンテナが簡単にアンテナがお辞儀する可能性がある)でERC5Aを薦められましたが予算も無く、中古をさがしてくれましたので、それを使うことにしました。下の写真がERC5Aです。見難いですが自転車のチェーンみたいなのが付いています。2mや430でEMEを巨大アンテナでやる人が良く使うそうです。重さはこのモーターだけで19kgもあります。もちろん迫力ある大きさです。
仰角コントローラは下の写真の右側のものです。仰角は-10度(下向き)までいきます。
プリアンプは1に耐電力、2に低NFということで探しましたが市販の耐電力の大きいものは川越無線とFTI殿の紹介のウエストパークのものしか見つかりませんでした。いずれも1kW連続に耐えうる同軸リレーを搭載していますが、ウエストパークのものは東洋通商のCZX3500という特に大型のものを2個(入出力)入れており、ウエストパーク製にしました。通常こういったプリアンプはアンプ本体と同軸リレーはプリアンプ内で分離して同軸で接続されていますので、将来アンプユニットだけ交換したり、同軸リレーだけ交換することも可能です。下の写真が直下型プリアンプです。樹脂製のケース内で一旦アルミ板で仕切りを入れて、その中に同軸リレーとアンプユニットが固定されています。
一般論ではありますが同軸で減衰する前に低NFのプリアンプで増幅しておけばオーバーオールのNFは同じNFのプリアンプをRIG直前に入れるよりは良くなります。特に長い同軸を使ったりコモンモードフィルタやリニアのリレーなどを通ることによる減衰には良い方向に働きます。
今回使用したウエストパーク製のプリアンプはリニアアンプの電力が送受信のタイミングでプリアンプ側に入らないように外部スタンバイ遅延装置とでもいったらよいのでしょうか、そのようなものも一緒に購入しました。ただパソコンからの送受切替とマイクでの送受切替の両方をうまく出来るようにするには何らかの工夫をしないと厳しそうです。
下の写真がウエストパーク製のスタンバイ遅延ユニットです。外観はいかにも自作という感じですが、LEDによる動作状態の見分けはし易いです。
まず既存のアンテナ(6m8ELEとHFのデュアルバンド八木)をマストから外し、さらに既存の6m長のマストをタワーから抜き取ります。HF八木はもう一度あげるのでタワー途中に仮で固定してます。
次に新しい2重構造強化マスト(8.5m長)をタワーに差込み、HF八木をあげて、タワートップに仰角ローターとアームを取付けます。仰角ローターとHF八木の間隔は4.5mです。仰角ローターはアンテナの偏波面を変えるためではなく、仰角を変えるためですのでマストから1本横方向のマストを追加します。これによりバランスが悪くなるためかなり長い60ファイの鉄パイプのマスト(おそらく4~5m長)を取付け、そこにCL610Aを水平偏波で取付けます。
さらにCL610Aはブームステーが必要なアンテナですので、CL610Aにブームステー用のマストを取り付け、金属製のワイヤーでCL610Aのブームを引き上げておきます。ということで6mのアンテナはかなり複雑な取付けになってしまいました。
地面では6m10ELE八木の組立てが行われていました。ブーム長13m越えというのはさすがに長いです。道路には下ろした8ELEが置いてあります。
組みあがった6m10ELEをタワートップまで引き上げます。エレメントや同軸があちこちに引っかかりながらの作業で一番大変そうでした。
6mメインの私としては当然6mの八木を上に上げたかったのですが、仰角ローターの重さが19kgもあり、6m10ELE八木のアンテナが8ELE八木の11.5kgに対してCL610Aは17.5kgもあります。しかしHFも出たいというわがままを安全性とともに満たすにはHFの八木アンテナを上に、6mの10ELEを下につけるのが良いとのFTI殿のアドバイスに従うことにしました。
確かにマストは2重構造の強化マストを使用していますが、やはり6mの10ELEは大きな部類になるということで、納得しました。6m10ELEと仰角ローターだけならタワートップから3m程度のところでも問題ないという見解も頂きましたので、チャンスがあればHF八木をおろしてあと3mあげてみたいと思います。
下の写真では10ELEをアームに取付けています。ブームステーを張っていないのでブームが垂れ下がっています。
ブームステーも張り終わって、タワーを伸ばしたところです。あれだけ大きく見えた10ELEもタワーが伸びると不思議と小さく見えます。
工事が一通り完了してアンテナの動きやSWRのチェックをFTI殿と一緒に行いました。その結果仰角は45度まで可能で、それ以上ではHFの八木アンテナのエレメントに接触してしまうことがわかりました。また、10ELEのVSWRが1.5程度と思わしくなく、色々調べると仰角を10度くらいまで変化させるとVSWRは1.25程度まで下がることがわかりました。HFの八木アンテナとサイドのアーム用マストなどの影響でしょうか。
仰角30度の状態です。あと15度上げられます。
935hPaという大型の台風14号が九州に近づこうという日で、ここも1日を通して雨が降り続く中1日中かかってFTI殿がアンテナ工事を実施してくれました。手伝いたい気持ちもありましたがプロの手際のよさに、お茶を出すくらいしかできませんでした。また色々な要望を豊富な経験を元に実現していただいたことに感謝いたします。
今回のアンテナ工事では今まで使用してきたCL6DXZ(8ELE)は26mHだったのに対し、タワートップ近辺の22mHまで地上高は下がっています。仰角無しの状態で22mHリアルグラウンドの条件でパターンをアンテナシミュレーションソフトMMANAで確認してみました。下の絵がそれです。良い悪いは別にして、上にはHFの八木もありますのでこんな感じかというところです。ちなみに26mHですと仰角は3.2°になります。
またCL610Aは当初VSWRがあまり下がらず、クリエイトデザインにも何か方策がないかVSWRの測定値とアンテナの全景写真をメールで送って問い合わせましたが、やはりHFの八木アンテナ(クリエイトデザインの214A)と方向をずらすくらいしか方法はないとのことでした。
が、やはりタダでさえアンテナの高さが下がってしまったので、VSWRを少しでも下げようとCL610Aのラジエータ、リフレクタ、第一第二ディレクタの間隔やエレメント長を微妙に調整して下のグラフ(緑が仰角なし、黒が仰角30度)のような結果になりました。我慢のしどころかなといったところです。
国内のGWでは見通し距離の局はもちろん仰角をあげると次第に弱くなります。しかし主に秩父奥多摩を越えてくる2、3エリア方向の移動局は仰角を10度くらいにするとSにして2~3強くなることがわかりました。山岳回折の関係でしょうか。私のロケーションでは東方向以外は仰角にして5度程度が概ね山や丘になっていますので、この影響ではないかと思います。従来のCL6DXZ(8ELE)の時よりは明らかに良好に受信できることがわかりました。
元々仰角ローターをつけた目的はEMEで少しでも長い時間QSOできるチャンスを作るためでした。2005年9月24日に東方向(月の出)のタイミングでW7GJ局と1stEMEQSO(JT65Aモード)に成功しました。ただこのときのアンテナの仰角は2~3度ですので、仰角ローターは特に関係ありませんでした。EMEではこれからまた試してみたいと思っています。
2006年の5月から7月まで、サイクルの最低期であるにも関わらず連日のように北米、ヨーロッパがオープンしました。過去経験した事のないようなコンディションに驚かされましたが、その際6mのアンテナの仰角を15度から30度上向きにすることで相手の信号が浮き上がるような現象を何度も経験しました。浮き上がるというのは大陸からのバズが仰角により弱くなったことではないかと考えています。また諸説はありますが実際にDXからの信号が高い位置から降りてくるという表現が合っているかわかりませんが、信号強度も上がったことも確かでした。純粋なF2層伝搬ではないことは確かですが、多くのエンティティとQSOでき連日興奮していました。
仰角ローターを6mの10ELEにつけたわけですが、その管理?も大変です。仰角をつけたままタワーをクランクダウンさせると多くの方向で自宅のTVアンテナやそのステーにぶつかります。また強風時に仰角をつけているとブームステーが役に立たず、アンテナ全体が大きく揺さぶられたりもします。また通常のローテータに対する負担も未知の部分があり、強風などを今後経験して機械的強度についても考えたいと思っています。
ただ、6mの10ELEに仰角がついている雄姿は私個人にとってはとても新鮮な姿に写ります。