6mでDXや国内の弱い局と交信することが楽しくなってきた頃からトランシーバーの能力などに興味を持っていましたが、高価な測定器があるはずも無く、人のウワサで自分のトランシーバーの良し悪しを決めていました。
最近6mEMEに首を突っ込んでいるうちに受信能力についての重要性がわかってきて、その中で受信系のNF(ノイズフィギュアー)が気になるようになりました。色々調べてみてなんとなく理屈はわかったような気になったのですが、最後は自分のトランシーバーなどの実力を数値で知りたくなり、若干の試行錯誤はありましたがNFらしき値?!を測定しましたので、その実施の記録という意味で記してみました。
NFの測定法は色々あります。NFの意味や定義については参考文献などに丁寧に説明して有りますのでここでは割愛して、自分の受信系のNFを測定することを目的として記しました。とりあえずNFは低いほうが良い!!これだけは言えることです。
以下にノイズ発生器(以下ノイズソース)を使う一般的なYファクタ測定法と、ノイズソースを使わない信号発生器2倍電力測定法について簡単に説明します。
過剰雑音比(以下ENR)が明確になっているノイズソース(ノイズ発生源)を受信機やプリアンプの入力に接続して、そのノイズソースをON/OFFしたときの受信機やトランシーバーのスピーカ出力電力、あるいはプリアンプの出力電力の比をYとします。(ONのときの出力電力をP2(W)、OFFのときの出力電力をP1(W)とします)次の式(1)です。比が大事なので測定電力の絶対値は重要ではありません。
Y=P2/P1………(1)
ノイズソースのENR値(通常dBでENRは表示されていますが、これを真数に直します…※)を式(2)に入れればノイズファクターFは計算できてしまします。
※ dB表示のENR(ENRdB)を真数のENRに直すにはENR=10(ENRdB/10)で計算します。
F=ENR/(Y-1)………(2)
Fは真数ですので、次の式(3)でdB表示に直します。
NF=10logF………(3)
以上で受信機やプリアンプのNF(dB)が求まるというわけです。P1、P2が下のメータのように「dBm」で直接測定できるならば(4)式で直接NFをデシベルで求めることが出来ます。
NF(dB)=ENR(dB)-P2(dBm)+P1(dBm)………(4)
厳密にはノイズソースのENR値はOFFのときは290K(ケルビン)つまり17℃での値ですので、温度環境が違えば補正する必要もありますが、よほど寒いとか暑いということがなければ大した誤差にはならないようです。いずれにしてもENR値が支配的ですので正確なノイズソースが必要になります。既製品のノイズソースは大変高価ですが、色々な方がツェナダイオード等を使用したノイズソースを安価に実現されているようですので、参考にされると良いと思います。 ただいずれにしても一度はENRの分かっているノイズソースと突合せして、自作のノイズソースのENR値を知る必要は生じてしまいます。
なおP1やP2の測定は受信機であればスピーカー出力の電圧を測れるAC Voltmeter(ミリバル)、プリアンプの測定であればスペアナがあれば良いでしょう。
この測定方法はYファクタ法で使うノイズソースを使用しないで、SSG(Standard Signal Generator)とAC Voltmeter(ミリバル)と50Ωダミーロードを使ってでNFを求めることが出来る測定方法です。
受信機の入力に概ね室温(正式には290K)の50Ωダミーロードをつないで、そのときの受信機やプリアンプの出力電力P(W)を測定します。次に50Ωダミーロードを外して信号発生器(以下SSG)をつなぎ、出力電力を測定し2P(W)…2倍の電力(dBなら3dBアップ)になるまで変化させます。そのときのSSG出力電力PSSG(W)を読み取ります。その値を式(5)に代入してノイズファクタFを求めます。
F=PSSG/(kTB)………(5)
得られたFは(3)式でdB表示になおします。これでNF(dB)が求められます。
Bは受信機のモードでフィルタの帯域幅が変わりますがSSBモードなら取扱説明書をみて3000Hzとか2400Hzの値で概ね良いと思います。厳密には帯域特性はスカート部分の無い完全な矩形状態の帯域幅をいうようです。
今回私の持っている50MHzトランシーバーのうち、
について前述の信号発生器2倍電力測定法にてNFを測定してみました。トランシーバーにAGC(Auto Gain Control)のON/OFFスイッチがあればOFFにして測定するのが無難です。これはAGC機能がその名のとおりある程度の強さの信号が入ると受信部の増幅率を下げてしまい、受信部のゲインが直線でなくなってしまうからです。ただ、Sメータが振れるよりもある程度弱い信号では増幅率が非線形にはならないようです。
Fig.1のように機器を接続します。50ΩterminatorやSSG(Fig.2)は出来るだけ短い同軸でつなぎ、同軸の変更はしないようにします。(同軸の損失もNFに影響するため)AC Voltmeterは親機のヘッドホンジャックから取り出してあります。また、私の場合は純粋なアナログ系での値を知りたかったので、FT-1000mkVのDSPによるノイズリダクション(NR)などはOFFしてあります。


FT-1000MPmkV+FTV-1000の結果は次のようになりました。USBモードでフィルタ帯域は2.4kHzです。結果の値はトランスバーターFTV-1000と親機FT-1000mkVを組み合わせたオーバーオールのNF値です。校正されていないSSGやAC Voltmeterを使用していること、メーターのふらつきが激しく測定値が読み難いなかで測定した値であることなどを考慮すると、少々信憑性の低いデータだと思いますが、こんなもんでしょうか。ちなみにAGCをONして測定もしましたが、非常に弱い信号しか入れてなかったためAGCがはたらかず、測定結果の違いは見られませんでした。
| FTV-1000の 受信アンプ状態 |
NF(dB) | 備考 |
| IPO ON | 24.18 | 高周波増幅(プリアンプ)なし |
| RFAMP1 | 10.48 | プリアンプ1をON(取扱説明書によるとGainは約10dB) |
| RFAMP2 | 4.88 | プリアンプ2をON 取扱説明書によるとGainは約15dB |
FT-655は一昔前のトランシーバーですが、大変人気のあったトランシーバーで、今も現役で使っている人は大勢いると思われます。FT-655の測定結果は次の通りです。USBモード、フィルタ帯域は2.4kHzで測定しました。
| FT-655の 受信アンプ状態 |
NF(dB) | 備考 |
| PreAMP/OFF | 11.08 | |
| PreAMP/ON | 5.58 | 取扱い説明書によるとPreAMPのGainは約10dB |
さらにもう一昔前(20年以上前)のFT-625Dでも測定してみました。USBモード、フィルタ帯域は2.4kHzです。結果は次のとおりです。前述のトランシーバと比べるとやけにNFが低く計測されました。
| FT-625Dの 受信アンプ状態 |
NF(dB) | 備考 |
| PreAMP/OFF | 5.98 | |
| PreAMP/ON | 3.18 | 取扱い説明書によるとPreAMPのGainは約10dB |
FT-1000MPmkV+FTV-1000の測定でAGCが働かない程度の弱い信号を入力して測定する場合にはAGC機能のON/OFFでの測定結果に違いが見られませんでしたので、FT-655やFT-625DにはAGCをOFFするスイッチはありませんのでAGCはONの状態で測定したものです。また、SSG(Kikusui KSG4500TS)の出力レベルは±1dBの誤差がありますので、上記の結果も±1dBの誤差があるということになります。
実際の測定方法、測定器の精度(校正したものではないので)に今ひとつ自信がもてていませんが、同じ条件で測定しましたので優劣はわかりましたが、NFが最も低かった(良好)のがFT-625DのプリアンプONの時というのは驚きました。NFはあくまでもトランシーバー単体の状態ですので、同軸やアンテナなどにより当然聞こえ方は変わるものです。ですが、自分のトランシーバーの実力を、誤差がある程度あっても知っているとなんとなく安心するのは私だけでしょうか。(トランシーバーのスペックにNFを記述してもらえるとありがたいと感じました)
またトランシーバーのNFを知っていれば今後ゲインとNFのわかったプリアンプを追加したときにも、計算でプリアンプを含めたオーバーオールのNFを算出できますので知っていて損はないと思います。例えば上記測定結果でプリアンプのゲインが概ねわかっていますので、トランシーバーに内蔵されているプリアンプのNFも計算できます。
今回の方法はノイズソースを使わない方式で測定したものですが、前にも書きましたがミリバルの針のふらつきが激しく測定値を読むのが難しいことが予想外でした。またENR値がわかるノイズソースを使える機会があれば、Yファクタ法でも測定してみたいと思います。
上記測定方法や結果などについてご意見、ご指摘等ございましたらぜひメールをいただけますと幸いです。